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深夜にふと誰かに語りたくなったことを書いていくブログ

【小説】工場の日々とギャルとの合コン2

「私って、面食いなんだよねぇ」

 

頭の悪そうなギャルが誰も聞いてないのにそんなことを呟く。ボクは、そんなギャルを目を細めて見る。こいつは、何を意図してこんなことを言っているのか?今日の男側のメンツには、イケメンはいない。ヤンキーっぽい男はいるが、ボクを含めて、決してイケメンではない。

 

田中に誘われて行った合コンは、居酒屋で行われた。しかし、田舎の悲しい点で、ほとんどが車で来ているので、酒を飲むことが出来ない。そんな合コンに集まったメンツは、いかにも田舎という感じだった。合コンは4対4のスタイル。男側は、期間工の田中、ボク、左官をしているマサさん、フリーターでバンドをしているユウキくん。女側は、幼稚園で働いているカナさん、ネイルサロンのモモさん、フリーターのユキコさんとトモちゃん。この中でヤンキーっぽいのが、マサさん。ギャルがユキコさんとトモちゃん。

 

「でも、男っぽくて、ガッチリしている人もステキだと思う。」

 

コミュ力が高そうなネイルサロンのモモさんがフォローを入れる。他の女たちもそれに同調する。それに応じて、男たちがそれぞれのエピソードを話始める。毎日筋トレしているとか、ベンチプレスで何キロ上げれるとか、昔のケンカの話など。いかに自分が大きな男かという話。そんなやりとりを聞いていて、ボクの心はどんどん曇っていった。

 

ここで、何をやっているんだろうか?

 

心の中で、そんな言葉を反芻する。この人たちの話は会話になっていない。自分のしたい話を交互にしているだけ。自分を大きく見せたい、魅力的に見せたい、そんな欲求が溢れ出ている。

 

「あなた、話を聞いていないでしょ」

 

ギャル2号のトモちゃんが、ボクに向かって声をかけてくる。それに応じて、みんなの視線がボクに集まる。それも、そのはずだ。自己紹介の後、ボクは何も喋っていない。食事をしたり、たばこを吸ったりを繰り返しつつ、適当に相槌をしていた。

 

「イケメンでもないし、男らしくもないので、喋る勇気がなかった。あまり喋るのも得意じゃないし。」

 

本当は面倒だと思って喋らなっただけだが、とりあえず周りの空気を読んで、自分を落としておく。これがボクの今までの人生で培ってきた処世術。周りを刺激せずに穏便に事を済ませる能力。言い方をかえると負け犬の生き方。

 

「そんなこと言うなよ。お前もいいとこあるって。」

 

左官のマサさんがよく分からないフォローをする。この人は兄貴肌だ。

 

「どこだよ、初対面じゃん。知らないじゃん、」

 

ギャルのトモちゃんとユキコさんが面白そうに笑う。こいつらの人を見下した態度は気に入らない。こいつらとは住む世界が違う、自分にそう言い聞かせて、この場に馴染めない自分を慰める。

 

そのまま時間が過ぎていき、次はみんなで海に行こう!みたいな流れになる。ボクはとりあえず空返事をしておく。会計をしながら、携帯番号の交換が始まる。当然のことながら、ボクは誰からも番号を聞かない。

 

そう思っていたが、意外なことに幼稚園で働いているというカナさんが番号を聞いてきた。カナさんも今日はほとんど何も喋ってなかった。ギャルに比べるともちろん地味だが、高校のクラスにいるとモテる部類に入る。

 

期待しちゃダメだと自分に言い聞かせる。これは社交辞令。この手の優しさに騙されて痛い目をみた友人を知っている。それ以外の人とは番号を交換せずに、そのまま合コンはお開きとなる。ボクは明日の朝が早いのでと言って、その場を去った。

 

その夜、寮に戻ると、カナさんから社交辞令のありがとうメールが届いていた。それに対して、サバサバしたメールを返す。こちらこそ、どうも、喋らなくてごめんなさい、みたいなメールだ。海が楽しみですね、カナさんのメールはそう締め括られていた。

 

あるかないかも分からないし、合ったとしても行くか分からないので、そのメールを返信しないまま、眠りについた。しかし、後日、この海に行く話が現実となる。