”らくだキャンプ”へようこそ

深夜にふと誰かに語りたくなったことを書いていくブログ

【小説】工場の日々とギャルとの合コン1

「こんなことをする為に会社に入ったんじゃない。」

 

工場に向かうバスの中で、心の底からそう思った。3月に大学を卒業し、そのままサラリーマン生活がスタートした。就職した先は、愛知県のメーカー。入社後は、全員が現場実習を受けることになっている。現場の気持ちを知る為、だそうだ。

 

「まぁ、そういうなよ。」

 

隣の席で、金やんがめんどくさそうに言う。金やんは同期入社で、入社後の研修も、現場実習先の工場も同じだ。特に気が合う訳でもないが、一緒に行動をしている。

 

会社のバスは僕たちを乗せて、会社の寮から工場まで決まった時間に届けてくれる。工場についた後は、ロッカーロームで服をジャージから会社の作業着に着替える。携帯をしまう前に、先週末に合コンで知り合った保育士の女の子に今週末空いているかどうかのメールを入れておく。

 

ボクが配属されたのは、塗装部。ボクの仕事は色を塗ることではない。色を塗る前にホコリやゴミを布で拭き取ることだ。もちろん、ホコリやゴミは目に見えない。今週は朝勤なので、6:30から仕事が始まる。

 

仕事を始まる前の体操をみんなに混じってやっていると組長に呼ばれた。

 

「期間工の田中がお前に文句を言っているぞ。期間工であることをバカにされているって言うてたけど、本当か?」

 

なんでこんなことを聞かれるんだ。そもそも、田中って奴は、夜に何度も電話をしてきて、ファミレスでの合コンに何度もボクを誘ってくる。相手は30~40歳で人妻もいるらしい。興味はあるが、身元が完全にバレているこの状況で行くのは危険な気がする。バカにするというか、無視している。関わりたくない。

 

「田中さんって、夜に電話を何回もしてくるんで、最近は無視しています。」

 

組長は、そうか、分かった。とだけ答えて去っていった。ここの職場は5人1チームで、組の中には2チームある。組長は2チームのボスだ。そして、それが朝直と夜直の2ユニットある。その中で期間工は、5人ほど。仕事はキツイが給料がいいので、ここで働いている。ミュージシャンや旅人など。中には何を考えているのか分からないやつもいて、田中はそのタイプ。

 

仕事が始まると、とにかく頭の中を空っぽにして、時間が経過するのを待つ。何度も繰り返し作業をしているので、体が自動的に動く。思考を停止し、作業のステップ1から5を繰り返し数える。それを9時間ほど続ける。

 

仕事が終わって、作業着から着替える。メールをチェックするが返信は無い。今日の空のように灰色の気分で、寮までのバスに乗り込む。ここで何をしているんだ?そんなことを自問自答しながら、イヤホンをつけて現実逃避。そうこうしている内に、金やんが隣の席に座ってくる。イヤホンを外す。

 

「今日はどうだった?」

 

どうもこうも、いつもと同じ。顔を見ずに答える。金やんは職場で馴染めているようで、歓迎会をしてもらったり、食事に行ったりしているようだ。仕事にもマジメに取り組んでいる。改善提案なるものまで出したらしい。ボクにはとてもマネ出来ない。かと言って、会社を辞めるだけの度胸もない。それがボクだ。

 

平凡な生活の毎日のはずだったが、その夜に事件が起きる。

 

田中だ。奴が今日も電話をしてきた。組長から言われたこともあって、少し躊躇しながらも電話に出た。

 

「今から合コン来れる?メンツが足りないんだ。」

 

「眠たいから辞めておく。わりぃな。」

 

「そう言うなよ。今回は、メンツもいいし、少しだけでいいんだ。若いギャルが揃っている。」

 

工場があるような場所はだいたい田舎だ。ボクが住んでいる町もそれに漏れず田舎。田舎にはヤンキーやギャルが生息している。少し興味が沸いてくる。人妻は嫌だが、ギャルには興味がある。

 

「少しだけなら」

 

そう答えて、会場に行くことにした。帰りのこともあるので、自分の車で移動する。全くつまらない場合に、すぐに帰れるように。場所は、いつもと違って居酒屋。今日はデニーズではないみたいなので、田中も気合いが入っているのかもしれない。